インプラントの最新ニュース
インプラントは日々進化しています。以前できなかった治療も今では普通にできてしまうということも決して珍しくはありません。
鋼鉄と同じ強さがあるのに重さは四五%、アルミニウムと比べても六〇%の重さしかないのに強度は二倍、しかも金属疲労しにくいという特徴があります。
チタンは、アポロが採取してきた月の石や隕石の中にも含まれており、鉱物の中だけでなく植物や人体にも、ごくわずかだが含まれていることが確認されています。
金属チタンが初めて工業的に使われる技術が確立されたのが一九五〇年で、発見から一六〇年ほど経ってからのことでした。
というのも鉱石中の二酸化チタンから酸素を取り除く精製技術が確立できなかったのです、これを可能にしたのは、電気分解の技術が確立されてから。
電気を大量に使えるようになったことで、ようやく恒常的に生産が可能になったのです。
しかも、硬い金属なので加工も難しく、ゴルフのチタンドライバーやメガネのフレームなど身近なところで使われるようになるまでに長い時間がかかってしまったというわけです。
チタンは、アルミ、鋼、鉄、マンガンなどと合金を作ると軽くて衝撃にも強くなるため、戦闘機やロケットの本体、あるいはミサイルなどにも利用されるようになっています。
軽くて丈夫でしかも汗に強く変化しにくいので、メガネのフレームなどの日用品にも使われるようになっています。
もう一つのチタンの特性は身体との相性がいいことです。
たとえば二酸化チタンは皮膚を保護する働きをすることから、日焼け止めの材料として使われています。
噴射するだけで生体と馴染みやすい親和性があるため、スプレー剤としても使われています。
このように身体との相性がいいという性質を利用して、医療分野での応用が進んでいます。
おなじみの人工歯根や人工関節、人工の耳、頭蓋骨の代替品など、身体のあらゆる部分の治療に広く使われるようになりました。
オッセオインテグレーションの発見チタンが医療分野でこれほど使われるようになったのは、このように、軽いのに硬くて丈夫なこと、酸に強く錆びないこと、電気や熱伝導が低いこと、そして金属アレルギーを起こしにくいことなどのいくつかの特徴があるためです。
しかも長期に体内にあっても身体に優しく害を及ぼさないだけでなく、身体の組織と相性がいいということが実証されたためです。
そのきっかけを作ったのが、スウェーデン・イエテポリ大学の整形外科医で解剖学者であるブローネマルク博士です。
一九五二年、博士は当時骨折の原理を研究するために骨髄の機能について実験を始めました。
この実験で起こった、ある偶然が現在の生体向けのインプラント利用の礎になっています。
なぜ骨折した骨が再びくっつくのか、生体における治癒がどのように行われているかを実験により解明するには、実際に骨の中を観察する必要があります。
骨の組成は中心部が空洞でその中に骨髄があり、外側を囲むように皮質骨があります。
博士はこの骨髄の中の細い血管に注目し、この中を赤血球や白血球などがどのように循環しているかを観察しました。
ちなみに、毛細血管内の微細還流をマイクロサイキユレーションといいます。
まずはウサギを使って、マイクロサイキユレーションがどのような仕組みになっているのかを確認する実験を行いました。
ウサギの脛骨に穴をあけて、骨の表面の皮質骨という硬い骨の部分を薄く削ります。
中が透けて見えるくらいに削ると、骨の中には海綿骨という軟らかい骨組織が見えます。
その海綿骨の中を血液がどのように流れているかを観察することで、マイクロサイキユレーションの実態を確認しようと考えたのです。
骨の中の血流を調べるために、骨にチャンバーという小さな顕微鏡を取り付けて、このレンズから血流を観察しようと考えました。
血流を確認するにはウサギが生きていなければ困るので、生体に影響を与えない物質でできた顕微鏡でなければなりません。
従来は金や真鎗製のチャンバーを取り付けていたのですが、プロジェクトに参加していた教授が「チタンがいいのではないか」とアイデアを出しました。
当時ようやくチタンの精製技術が工業的に可能になり、小さな顕微鏡に加工する技術もできていたということもあり、ウサギの脛骨にチタン製のチャンバーという顕微鏡を骨に取り付けることになりました。
こうして、骨折が回復する過程を数か月にわたり血流から観察する実験が始まりました。
骨の中には骨髄があり、その中には大きな血管が通っていて血流があります。
また、骨髄の周囲には硬い皮質骨があり、その中にも細い血管が通っています。
観察により、骨の中の細胞は大きな血管から白血球や血小板を取り込んでいて、骨が折れると、骨膜の細胞と骨の中にある血管綱によって治癒するということがわかりました。
その後、別のウサギにも同様のことが起こるかを観察するために、最初のウサギの骨に取り付けた顕微鏡を取り外そうとしました。
なにしろ、高価なものなので、一回の実験で使い捨てにするわけにはいきません。
しかし、どうしても外れません。
最終的には骨を切って外に取り出し、機械で強引に引っ張って外そうとしたのですがついに外れませんでした。
よく見ると骨とチタンが密着し、ほとんど骨と同化していたのです。
これほどまでに骨と親和性を持つ金属を見たことがなかった博士は、この金属に強い興味を持ち、外れないという特質を別のものに使えないかと考えました。
そこで一九五九年、歯根として使うことを思いつき実験を開始します。
こうしてチタンを利用した歯科インプラントが始まったのです。
チタンが生体にくっつくことを、現在では「オッセオインテグレーション」といいますが、当時はその言葉がなく「ボーンアンカレッジ」といっていました。
骨の再生の原理を究明するという実験から、チタンと生体の意外な関係が明らかになっていったのです。
歯科分野におけるインプラントの重要性ブローネマルク博士のオッセオインテグレーションの発見のおかげで、歯科治療は、驚異的な技術革新を遂げています。
それが、チタンという金属を歯根として使用する、モダンインプラント歯科治療です。
わざわざモダンとついているのは、それまでにさまざまな素材や方法でインプラント技術の研究が行われてきたのですが、骨にくっつくものを作ることができませんでした。
チタン以前と以降を分ける意味もあり、チタンを使ったインプラント技術をモダンインプラントというようになっています。
人間に対するモダンインプラント第一号の患者さんは、七〇歳過ぎの年齢で亡くなるまで、最初に埋入したインプラント体を四〇年以上使い続けました。
いかにしっかりと骨にくっついて歯根の役割を果たしたかがわかります。
私がモダンインプラントの存在を知り、スウェーデンで治療技術の研修を受講してからでも二五年以上経ちました。
その間、チタン製のインプラントそのものも年々改良され、より親和性が増して、残る割合が向上しています。
それに伴い、モダンインプラント治療の技術が著しく向上しています。
当初は患者さん自身の骨があることが条件で、その骨にチタンのインプラント体を埋入して人工歯根としてそれに義歯を取り付けていました。
当初は、骨のないところにはできないといわチタン製のインプラント体。
骨と結合しやすいようにネジ山が切ってある。
ところが近年、骨の増成技術が向上して、歯周病などによって歯槽骨がほとんど失われた患者さんへのインプラントの埋人も可能になっています。
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